かまぼこ
足の痛む70代の女性。脊柱管狭窄症があるがそのせいで痛いのではない。
いつも足先が赤くて痛む、ひどいときには紫色になって見るからに腐っていきそうと訴える(そんな病気が別にある)。常にだるく、歩くといっそう痛くなる。
お一人で暮らしているがご家族が近くにいて老後の心配はないはず。でもお一人様の老後、不安はいっぱいあると思う。
病気の原因は一つじゃない。いつも思う。
今起こっていることがどうやって形作られているかを理解すれば、治療の役に立つし患者さんの気づきも起こる。そうするとグングン良くなっていく。
この患者さんは来院するたびに自分の病気について説明を求めてくる。何度も同じことを説明する。納得していないから、また説明を求める。納得のいく説明なんてない。
治りたい、楽になりたい。でもお医者様からはもう治らないよって言われた。
藁にもすがる気持ちで鍼灸を受診。治らないって言われてるけどどうなの?治るの?やっぱり治らないの?そんな気持ちなんだと思う。
治らないよ。っていってあげればそれで納得する。動時に絶望する。歳も歳だしこの一言で引導を渡したことになる。
「死に至る病とは、絶望である」キルケゴールの言葉。
希望があれば生きていける。そう信じて治らないと言えと脅迫してくる患者さんの言葉を無視して、根拠のない自信とともに「絶対治る!」と治療者が言ってはいけない補償の言葉を言い続けて来た。
治るってことは結果であって、経過中は見込みがあっても言い切ってはいけない言葉。
いつもは「一生懸命治しましょう」とか「良くしましょう」と言って患者さんのモチベーションを上げつつ治療している。
この患者さんには通用しない。
不安と責任を感じている。が、治してあげないと!
かれこれ半月ほどたつだろうか。
足の痛みに変化はないが、夜間尿の回数が減り、便秘が軽減してきた。
昨日バス旅行に行ってきたと、今朝早く写真のかまぼこをおみやげに持ってきてくれた。
治療日は明日のはず。
「どうだった?」
「楽しかったよ~」と笑顔。
「足は?」
「それが、思ったほどひどくなかったの。いっぱい歩けたし。」
第一段階終了。治療する、どっか行く、結構いい感じ、もしかしたら治るかも?
この繰り返しが鍼灸治療だと思う。
たまにはやっぱだめだったわ。ってこともあるけど、
何がだめだったのかをちゃんと分析して、再度チャレンジ。
病気との戦いはまだこれからも続く。明日の希望を胸に、励まし励まされ、鍼灸戦隊「ヘチガネレンジャー」は今日も治療中。
って、患者いないんですけど…。
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